モディ首相は11月19日、ビデオ会議を通じて農業重視政策について「私は過去50年間、農民の様々な取り組みを目の当たりにしてきました。故に、2014年首相に任命されて以来農業開発と農民福祉を政府の最重点課題として取り組んで参りました。」と述べ、このために農産物取引の自由化等に関する農業新法を導入して、農民、特に小規模農民が自由に取引できる環境を整え、その努力に見合った収入を得られるようにすることを目指したことを強調しました。また、多くの農民が、この新法を支持していることにも付言しました。
しかしながら、モディ首相は、同日、農産物取引の自由化等に関する農業新法の撤回を表明せざるを得ませんでした。この新法に反対する農民のデモが鎮静化せず、農業政策に混乱を生じかねないという事態を避けるための苦渋の決断でしょう。
農産物は最低支持価格(NSP: Minimum Support Price)での買い入れ制度がありますが、農業新法ではMSPが廃止されるとの不安があり、農民が1年以上抗議活動をしていました。新法は、このMSPが市場経済の自由度を阻害しているため撤廃しようとしたのですが、この権益にしがみつく農民が反対していたという構図です。
モディ首相は、就任以来農業改革と農民福祉を最優先に捉えておおり、灌漑用水の整備や土壌改良等を含め農業の近代化を積極的に進めてきましたが、農業新法の撤回により農業政策は明らかに停滞するでしょう。
インドの農業はGDPの約2割を占め、労働人口の半数が農業に従事している重要な産業であり、農作物の流通やインフラの整備を含んだ規制緩和による農業の改革が遅れないことを祈るばかりです。
なにはともあれ、今回の件で、インドが民主主義国家であることを改めて認識されたのではないでしょうか。もしこれが中国であれば、このような抗議活動など一瞬のうちに鎮圧されてしまうでしょう。さて皆さんは、将来どちらの国で仕事をしたいと思いますか。
(農業新法撤回を祝う農民)
(hindustantimes.com)