2020年6月29日インドの電子情報技術省は、インドの主権、安全と秩序を損なう可能性があるとして、中国の通信系アプリ「WeChat」とビデオ共有アプリ「TikTok」を含む59の中国製アプリの使用を禁止することを表明しました。
「WeChat」は、日本でも海外相手の通話等での利用者が多く、世界中で10億人以上使用され、インドでも「WhatsApp」に次いで使用されています。また、インドの「TikTok」ユーザーは1億2千万人に及んでおり、59の中国製アプリのユーザーは合わせて5億人を超えています。中国製アプリの使用に際して、中国政府による傍受、監視の可能性が指摘され、また、ユーザーのデータの盗難やプライバシーの侵害の恐れもあると言われています。
禁止措置がいつ発効になるかは明確になっていませんが、今回の措置は6月15日から16日にかけて印中の実効支配線(LAC: Line of Actual Control)で発生したインド軍と中国軍の衝突に端を発しているのは明白です。
また、中国製の製品に対する追加関税並びに厳格な品質管理措置等も、中国に対する政府の断固たる姿勢を示しています。
インド国民の怒りも簡単には収まらず、中国製品ボイコット運動もあながち口だけということにはならない兆候も見えます。
今回のインド政府の措置を簡単に言えば、インドは中国に対して本気で怒っているということを内外に示したことになります。
このような状況下、6月27日、海上自衛隊遠洋練習航海中の練習艦「かしま」、「しまゆき」は、インド海軍駆逐艦「ラーナ」、コルベット艦「クリッシュ」とインド洋上で共同訓練を行いました。この訓練は相互理解を深める目的でLACにおける衝突以前に計画されていたものですが、奇しくもインド太平洋構想におけるインドと日本の役割をより明確にしたと言えるでしょう。