マンモハン・シン首相講演
5月28日、日印協会、日印友好議員連盟、民間外交推進協会の共催により行われたシン首相の講演では注目すべき点が多くありましたが、特筆すべきは以下の点でしょう。
1 スバス・チャンドラボースを引用したこと。
2 安倍総理が、総理就任後、最初の国賓としてシン首相を迎え入れようとしていたこと。
3 2プラス2(両国外務省・国防省間の対話)とインド海軍・海上自衛隊間の合同演習について触れる等、2国間の安全保障面における関係について踏み込んだ発言をするとともに、将来の安全保障と防衛技術協力の拡大の必要性について言及したこと。
4 スズキ自動車のインド進出、デリーメトロの成功に触れ、現在の日印協力事業の象徴であるデリー・ムンバイ間の産業大動脈構想にも触れ、将来これをチェンナイ・バンガロール間にも拡大する計画のあることを敢えて紹介したこと。
5 昨年、レアアースに関する分野での相互協力に調印したことに敢えて触れたこと。
インド独立の志士スバス・チャンドラボースは、当時の東條内閣の全面的な支援を得て自由インド仮政府を作り、インパール作戦で日本軍とともに英印軍と戦ったという歴史的事実があります。インパール作戦は、援蒋ルートを断ち切るための作戦です。援蒋ルートというのは、米英による蒋介石の中国を支援するためのルートです。
インドが2プラス2対話の関係を有している日本だけです。2プラス2対話は、安全保障対話の枠組みです。中国とはこのような関係を有しておりません。
インドの自動車産業に革命をもたらし、インドの経済発展の牽引力となったのは日本であることを強調しました。更にレアアースに関する国家間合意にも敢えて触れたこと...。中国はレアアースを武器にして日本に圧力をかけた国です。
以上から、今回のシン首相の講演は、日本国民のみならず中国政府をも念頭においた強烈なメッセージと理解すべきでしょう。非同盟を貫いて来たインドとしては異例とも言えるメッセージ、この意味するところは非常に深くて大きいということをしっかり認識することが必要です。